ニセコ天国

毎年楽しみにしているSさんとの最小人数によるストレスなき山行!
今年は天候に恵まれ、会心の山行となった。

18日(土)
今年は冬に順調に雪が降り、また妙な暖雨等もないシーズンである。すでに立春も過ぎた今月も南岸低気圧による大雪などあったものの引き続きよい雪が期待できる。こうした中、聖地ニセコを初めて訪れる機会を得て深雪滑降への期待が高まる。ちょうど低気圧が抜けたところで、この週末は強くない冬型から徐々に高気圧に覆われて尻上がりに好天となるとの予報である。
ごった返す羽田からマイル無料券で飛び立ち、10時前に千歳着。4WDのカローラフィールダーで出発する。まとまった降雪があった後であり、滑る路面をSさんの運転で一路ニセコ五色温泉に向かう。
除雪の重機をかわしつつ2時前に到着。ここはアンヌプリを西から北側に回りこんだ位置にあって歴史のある温泉宿であるが、自炊棟もありこの時期は山スキーヤーの聖地でありTSMCの定宿である。宿のご都合で新館のツインルームに納まり、早速アンヌプリスキー場へ取って返す。
しかし、残念ながら山頂へのゲートはクローズとのことでありスキー場で少し遊ぶが、午後でもありあらかた新雪はあらされており、足慣らしだけして買出しに向かう。散々うろうろした挙句に倶知安市内のスーパーで、初日すき焼き、2日目「松尾ジンギスカン」、朝食はフレンチトーストと決めて、酒と共に買い込む。
露天風呂を楽しんで、酒を飲んでいると、今週の仕事疲れかあっというまに睡魔につかまってしまった。
19日(日)
6時前に起き出すが、あいにく雪が降り続く。車の屋根に50センチほどの新雪があり、除雪もまだ来ていない。結構明るく時々一部に青空がのぞいたりもするが、すぐに吹雪にもどってしまう。移動性高気圧前の強くはない冬型に思える。
とても山頂ゲートは開きそうもないので、シールを装着して北西側尾根ルートでアンヌプリを目指す。気温はマイナス15度ほどであるが、雪は大降りではない。尾根に乗り高度を稼ごうとするが、風が強く顔を襲う雪粒に負けて、950mあたりで早々に退却とする。ウィンドクラストで堅いところをのぞけば、さすがに気持ちの良い雪。
しばし宿で体制を立て直し、再出発。同宿のパーティはイワオヌプリに向かったようで、宿の裏からトレースが延びている。これを使わせてもらい、宿裏手の900m小ピークまで登り、急斜面滑降とする。これは結構あたりで、底のない新雪を巻き上げてノートラック斜面を楽しむ。標高差150mほどと短いので、再度登り返してもう一本滑り、小満足。
午後からはワイスでキャットでもと思いつつ、Sさんが電話でアンヌプリへのゲートが開いたことを確認。すかさず車に乗り込みアンヌプリスキー場へ急行し、ゴンドラ+リフトでトップに到着。大半の人はそのまま滑降に入っているが、風雪が続く中何人かがすでに山頂に向かっておりトレースができている。12時25分、我々も板を背負って後を追うこととする。アンヌプリへはほぼ同高度の各スキー場トップからルートが通じており、ヒラフからが最もアクセスしやすいようであるが、こちらからは顕著な南峰を経由して北峰にいけるので山屋としてはむしろ好ましい。 12時50分、吹雪の山頂に到着し、立派な非難小屋に一旦納まる。
視界がない中、40名程が山頂にたどり着いているが、半分近くは欧米人。最近人気との話が裏付けられる。ただし、大半はゲレンデに戻るようで北壁(“キタカベ”)に入るのは少数。特に北西の五色方面に向かうのはさらに少なくなる。小屋から何度も顔を出して視界を確認するがなかなか好転せずがっかりであったが、30分以上待ったところで50m程先が見通せる。北西尾根方向も見通せたので、即出発。コンパスとGPSでの確認はすんでおり迷いはない。降ったばかりで日にさらされていない雪は軽く深く、安定しており、最高の条件である。
50m程はクラストもあるので慎重に行く。斜度が増し、30〜35度の無木立の大バーンが見通せる。最初は丁寧な小ターンで粉雪を巻き上げてみるが、右方向にテレマーカーが高速で大ターンをしていくのを見て、一気に脳内ブレーカーが吹き飛ぶ。Sさんが高速モードに切り替え怪鳥の雄たけびですっ飛んでいく。この大斜面にトラックはまったくなく、底のつかない北面の抵抗感のない深雪!スプレーを巻き上げノンストップで下部灌木帯まで一気に大ターンで堪能する。これまでと次元の異なる感覚にウェスト103mm+ロッカーの我が板の性能を初めて実感する。大満足である。
北壁の滑降
Sさんと二人ふやけた笑顔でテルモスの茶を飲み、何人かのワイス方面に飛んでいく後続を眺める。しばし休憩後シールをつけて見返り坂経由で車を取りに戻ることとするが、心地よい感覚に全く苦にならない。北壁をほぼ真北に滑降し五色温泉方面へは2.5kmほど水平移動となるが先行者のトレースもあり楽勝でスキー場に戻った。
宿に戻って、週末が終わり札幌に戻る日帰り温泉ファンに交じって湯を楽しみ、松尾ジンギスカン吟醸酒&ワインで夜は更けていった。明日は晴れの予報。
21日
早朝湯に浸かりにいこうと起きだすと、月が山の端に沈まんとするところ。今日はよい天気に恵まれそうだ。羊蹄山にいきたいところであるが、帰りのフライトに遅れるわけにはいかないので、昨日対面に見えたイワオヌプリの大斜面を狙うこととする。宿の住み込みバイト氏も別ルートから向かうそうだが、我々は昨日のトレースを活用していちばん乗りを目指す。
山の端に月が沈む
晴天のアンヌプリ
おっぱいのようなニトヌプリ

アンヌプリは相変わらず山頂に雲をかけているが、それもまもなく取れそうである。昨日の小ピークまで20分ほどで登りつき、しばしチセヌプリ方面を見通しつつ平原状をいく。ほどなくイワオヌプリに向かう尾根にとりつくが、ここからはしばしラッセルで頑張る。それも大した距離ではなく稜線に乗り上げると360度の素晴らしい展望が開ける。シールをつけてどこまでも行きたいところである。緩い登りをどんどんいくと、ごつごつした火山地形となり、火口地形もでてくる。どこがピークか分かりにくいが地図とGPSで狙いを定めて進むと、少し下に3人ほどが支尾根を登ってくるのが見える。登り始めてほぼ1時間で快晴の山頂に達すると、アンヌプリの左側に重なるように羊蹄山も間近に望める。飛行機雲もかかって絶景である。倶知安の平原も日本海も見渡せる。さきほどの3人のひとりが宿の方で、山頂で合流。写真を撮りあう。アンヌプリの山頂にはたくさんの人が登りついており、何名かが滑降していった。
イワオヌプリ山頂を望む
山頂までわずか
記念撮影
イワオ南面
果てしない深雪
極楽滑降1
極楽滑降2
シュプールを振り返る
スプレーを巻き上げて

さて、我々も今回最後の滑降に入ろう。一番乗りの強みで好きなところをいけるが、まっすぐアンヌプリに向かう斜面に入る。50mも下ると急に斜度が増し、一瞬止まるが、その先はまさにまっ白な大斜面。太陽に向かい抵抗のない軽い深雪を吹き上げてすっ飛ばすときらきらとダイヤモンドダストが舞い上がる。あっという間にノンストップを滑り下りて快哉をあげた。雪原でテルモスの茶を飲み一息いれてシュプールを振り返る。至福のひとときである。遠くにバイト氏がテレマークで飛ばしていくのが見える。
しかし、まだ時間も体力も十分にあるし、ここはもう一本であろう。昨日のトレースも使わせてもらい、再び稜線に登りかえして再度滑降する。しかし、南面であるので2本目はわずかな時間差であるが若干雪が重くなってしまう。普段なら文句なしの雪質であろうが、きらきら感が少なくなりちょっと残念。それでも、ノントラックの斜面を思う存分に楽しみ、今度は右に右にと五色温泉に向かい、直接本館前に滑り込んだ。
のんびりと再度貸し切りで温泉を楽しみ、荷づくりをして空港に向かう。2便早めのフライトに移れたので早めに帰路についた。満足の3日間であった。
五色の露天風呂

(メンバー)
 s木、t田
(コースタイム)
20日(日)
♨(標高750m) 0745
北西尾根 0820/30
♨ 0845

21日(月)
♨ 0915
小ピーク(標高900m) 0925
♨ 0955/1005
小ピーク 1025/1030
♨ 1045

スキー場トップ (標高1140m)1225
アンヌプリ(標高1309m) 1250/1335
林道 1405
♨付近通過 1425
見返り坂 1440/1445
スキー場下1500

♨ 0735
イワオヌプリ(標高1116m) 0845/0835
下(標高780m) 0910/0930
稜線 1010
♨ 1030

(装備)
佐々木 ガルモント、アトミックシュガーダディ、ディアミールフリーライド
寺田 ディナフィットAero、K2クンバック、TLTスピード