オペラハウスの「Mountain」

teradaya2017-06-12


今日は、「Queen's Birthday」でニューサウスウェールズ州では祝日(クイーンズランドはその名前にもかかわらず休みではないのだが)。
オペラハウスで「山(Mountain)」という映像と生演奏をあわせた催しがあるので、チケットを入手。音楽は、オーストラリアを代表するオーケストラのひとつでシドニーを拠点とする「オーストラリア室内管弦楽団;Australian Chamber Orchestra(ACOと呼ばれている)」。1975年に設立された室内楽団で、自身もバイオリニストのリチャード・トニエッティ氏(Richard Tognetti)が芸術監督。今日も曲の提供&ソロ演奏等大活躍。同楽団は20人弱の少数精鋭で、日本人女性バイオリニストが1人いると聞いていたのだが、今回は名前がなかった。ホルン等管楽とピアノ他が今回は参加しているが、これは皆客員演奏者のよう。
総ディレクターは、豪女性ドキュメンタリー映像監督のジェニファー・ピードム(Jennifer Peedom)女史で、カメラマンのリーナン・オズターク(Renan Ozturk)氏とともに登壇。3年前にトニエッティ氏から持ちかけられた計画だとのこと。

日本や梅雨でもこちらは快晴  / オペラハウスからシドニー湾を眺めて開演を待つ。

一番大きい「Concert Hall」は満席(定時には始まらないが)

「山と人間の冒険」とパンフレットに表されていたが、なにせオペラハウスであり客層も年配の方が多く、正直なところ穏やかで心休まる時間をイメージしていたのだが、これが大違い。冒頭からビッグウォールのフリーソロのクライミングシーン、さらには過激なフリークライミング(& 米「Rock Master」シリーズも顔負けの大フォールシーン)、雪崩に巻き込まれつつの超スティープなエキストリームスキー、クリフの端のマウンテンバイク、パラパントスキーでの崖下り、超長距離のスラックライン、果てはモモンガスーツでのクリフダイブ(これは、狭い峡谷を真っしぐらに飛んだり、岩の穴を高速でくぐったり、さらにそのクラッシュシーンまでである)で、山を知る自分でも目がクラクラするほど。周りの人も叫びながら唖然として見ている(途中退場する人まででていた)。これにショパンやビバルディ、果てはベートーベン等を合わせて突き進む100分のプログラム。今も人の冒険はどんどんレベルを上げて未知の領域を開拓している、とのナレーション。一方で、固定ロープと酸素ボンベで数珠繋ぎに登るエベレスト登山者はけちょんけちょん。さすがに最後の10分は映像美とベートーベンでゆったりとまとめたが、終演後はスタンディングオベーション。とてもクラシックコンサートとは思えないが、これもオージならではのパワー。

パンフレットは大変優雅なのだが

カメラマンのリーナンは自身もロッククライマーで彼の仲間はエルキャピタンのフリーソロ等をやっているそう。トニエッティ氏の紹介文に、フリーソロの解説まで添えられていて、ますますクラシックコンサート離れしたプログラムであった。正直、先日のバンフフィルムフェスティバルよりもはるかに過激なオペラハウスであった。
チベット側ヒマラヤから始まり、モンブランマッターホルン等ヨーロッパ、エルキャピタンやハーフドーム等アメリヨセミテエリア、アマダブラム等の俊峰も美しかった。



終演後は、ちょうど日が沈む頃。たくさんの人たちがいつものように楽しげに集っていた。とはいえオペラハウスにつながる道には消防車や警察車両がバリケードとして停められていて、テロに備えているのが見て取れた。冒険は過激に、でも日常は平和で穏やかであってほしい。

(追加)以前、アイガーのスキーグライディング滑降の動画を見て驚いたが、思えば10年以上前の記録とは思えないほどこれも過激である