カウラ再び

ちょっと前から読んでいた「カウラの突撃ラッパ」(中野不二男著)を読み終えた。この本は1984年に出版され(自分が手に入れたのは1991年の文庫版)、日本ではすでに絶版となっているがシドニー紀伊国屋では棚に並べられておりまた他の本と違って海外上乗せ価格にもなっていないそうだが、確かに豪州在住の日本人には必読のドキュメンタリーだと思われる。
古い本だが

二次大戦中にカウラで起きた日本人捕虜の暴動事件の中にいたダーウィン湾攻撃で捕虜になった零戦パイロットの生涯を呆れるばかりの丹念な取材により一片一片を集めて紡いだ記録である。その結果たどり着いた事実は事件の印象から安易に想像されるものとは全く異なるものであり、関わった人たちそれぞれに真面目な人生があったことや、成り行きで思わぬ結果につながってしまう日本人の特徴などが浮き出ている。
思えばカウラの事件自体よく知られていないし、ダーウィン湾の爆撃は極めて大規模なもので、真珠湾攻撃ミッドウェイ海戦に出ていた空母4隻(赤城、加賀、飛龍、蒼龍)の南雲機動部隊によるものであることなども、日本人でも知っている者は少ないのではなかろうか。
歴史的事件にはちゃんと理由や背景があることをあらためて思い知らされた久々に重い読書であった。
作中、最後に四国高松がでてくるが作者がたどったのは1983年。自分の若かりし時分1986年にそこにいたので、宇高連絡船国鉄高松駅の描写などがとてもリアルであった(今はすっかり様変わりであるが)。
カウラにもぜひまた出かけたいと思う。