奥穂岳直登ルンゼと白出沢

teradaya2009-04-30

山の会の後輩2名と連休前半の晴天を狙って奥穂からの滑降にトライした。
4月29日に新穂高温泉から白出沢経由で白出コルの穂高岳山荘に宿泊。
翌30日に奥穂高に登頂し、山頂直下から直登ルンゼを滑降。源頭のハードバーンに緊張の滑降となったが、中間部は先週の降雪のおかげで快適なパウダー。小豆沢まで思い思いのシュプールを描いた。
白出コルに登り返した後、白出沢経由で帰途につくところで大きなアクシデント。パーティのうちY君が出だしのクラストで転倒し肩を脱臼。山岳警備隊や小屋の方々の救援を得て下山となった。
残りの2名は、予定とおり白出沢を滑降し、新穂高へ。高山の病院で治療を終えたY君と合流し、深夜にそれぞれ帰宅した。

※救助、支援いただいた方々に心より感謝いたします。きちんと原因分析を行い今後に生かします。

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29日(祝)
前夜22時半に八王子を出発し、新穂高には2時半着。テントを張って、寝酒を飲んで就寝。車両誘導係の方はその時間も起きて勤務中であった。
6時半に出発し、運動靴で白出沢出合近くまで歩き、出合の小屋隅にデポ。以降、シールに変更。最初は左岸側夏道を拾っていくが、起伏が大きく快適でない。15分ほどいってから河床に降りて、以降は陽光の中をひたすらシール登行。
3人とも白出沢は夏も含めて初であったので、天狗沢との分岐から白出大滝の高巻道がわからず、ルートファインディングに苦労する。A君の的確な読図とGPSの緯度経度から大滝を見つける。右岸側から高巻くが、板を背負っての微妙なクライミングとなり大苦労。滝上に夏道の踏み跡をみつけて上部雪渓に降り立った。後で小屋での同宿の方から、もっと下の涸沢岳西尾根に向かう沢の途中から取り付くことを聞き、帰路にはそのようにしたが、微妙なミックスクライミングであった。
以降、再びシールで長いのぼりを続けるが、日が射し始めると左岸(右手)側からドーンという音とともにしきりに小雪崩が落ちてくる。デブリがトレースにまで達することもあり、気味が悪い。なるべく沢芯をジグを切って急いで登り、クラストした源頭部もどうにか白出コルまでシールで登りついた。15時をまわっており今日の行程ははここまでとし、営業を開始したばかりの穂高岳山荘にご厄介になることとした。先週末に40センチくらいの積雪があったようで、見上げる穂高はまだ冬の気配。快晴の下久々の大展望を味わった。
美味しい食事とビールで、標高差1900mの登りに疲れたためか、日没や日の出をみることなく皆ぐっすりと眠ってしまった。もったいない。
穂高を目指し白出沢へ
新兵器TLTで軽快に
白出沢を登る(ルンゼ奥に「ロバの耳」)

30日(木)
朝から快晴。小屋の食事後スタッフのお一人と話し、昨日は9時頃涸沢までの滑降は先般の新雪もあってちょうど快適であったとの情報をもらう。
滑降時間を逆算して、7時に出発。出だしから岩と雪のミックスした急登に苦労する。その先はルート途中で作業中の小屋の方々の助言で急な雪壁にピックとアイゼン前爪のみでルートを作って10mほどクライミング。結構な高度感で緊張するがどうにかこなして雪稜に出て、あとは慎重なアイゼンワークで奥穂山頂に向かう。8時30分頃山頂に到着。山頂には数名の先着者があり、うちひとりは直登ルンゼをアイゼンで登ってきたとのことで様子を聞く。やはり新雪がかなり降り、その上がクラストした硬い面になっている模様。日陰が維持されている中間部以下は雪質はよくなると思われるが、上部は特に要注意である。祠(穂高神社奥宮、今年は式年遷宮の年である)の下でしばし休憩。

これより奥穂へ
雪壁を抜けて
祠に向かって最後のひと登り

滑降ルートを探るが、先行シュプールはない。先週の新雪後は誰も滑っていない様子。祠の直下から滑り出すとしばし左に斜滑降となる。真下に岩があり、またこれまでの登高を考えると上部はかなりハードクラストと思われることから、20mほど戻った小コルから滑り出すこととする。
9時05分、私からエントリー。横滑りで慎重に入る。40度弱くらいかと思われるが斜度よりも雪質に緊張する。幸い硬いとはいえエッジはどうにか立つ。ガガガッと落ちると、表面の5センチほどのクラスト部が流れ落ちていく。5mほど下がってから、意を決してジャンプターン。連続とはいかず、体勢を整え崩れ落ちる雪を見送る。さらに、ジャンプターンを3回ほど重ねて、ルンゼの左に寄って一時停止し、OKと声を掛ける。Y君が2番目に慎重にエントリー。続いてA君。一度流れる雪に足をとられそうになったが、うまく止まった。再び私からスタートし、高度を下げる。50mほど下ると締まった粉雪斜面となってきた。斑模様でアイスバーンもあるが、100mほど下るとほぼ全体が快適な粉雪となり、ショートターンの連続で歓声を上げる。右手には第一ルンゼへの踏み替え点のコルが見えるが、今日はよくばらず左に曲がる先に見える涸沢からの登行の列を目指す。快適斜面になりA君、Y君に先頭を譲り、最後尾を気分よく飛ばした。
ルンゼから抜け出ると明るい涸沢の大斜面。小豆沢を登る人の列に合流した(ちょうど穂高を目指していたRSSAのYさんと少しお話。この日、直登ルンゼから第一ルンゼを滑られた。)。滑降終了は9時20分。ルンゼ出口にきれいに3本のシュプールが見えて満足である。

緊張の滑り出し
源頭はカリカ
中間部はパウダー
快適に滑降
涸沢からの登りの列に向かって
核心を抜けて
シュプール3本

太陽の光の下、ぐずぐずに緩んだ斜面を白出コルに登り返す。2人はシールで行くが、私のTLTはしばしば誤開放するのでつぼ足に変更。アイゼンのダンゴ雪に苦戦してひたすら登る。暑い!登りついたコルでビールで祝杯。昨日は登行自粛勧告がでていたそうで、その分今日は大勢が登って来ている。

さて登りましょう
涸沢を登り返し
白出コルで一息

しばし休憩の後、11時05分白出沢に向かって小屋の左手(穂高寄り)から滑り出す。
ここで冒頭に触れたとおり、Y君が怪我をするアクシデント。小屋まで登り返し、救援を受けて下山することとなった。
残り二人は、13時15分、再度慎重に白出沢に入り、急いで下山。源頭の50mは固い斜面であったが、以降はザラ目となる。ここも降雪後は誰も滑っていない。2000m付近まで飛ばして右岸の大滝の巻道にぴったりと到着。小屋で聞いた助言を参考に、ほぼ夏道沿いにクリア。その後も徐々に雪が重くなる中、沢芯を辿り雪を拾いつつ出合の林道まで滑りきった。

事故の後、白出沢源頭を慎重に滑降

デポしていた運動靴に履き替え、新穂高まで急ぎ下山。登山指導センターに連絡をし、高山の病院に急行。治療を終えたY君と合流し、深夜に共に帰宅した。

(メンバー)
CL 寺田、Y、A

(行動記録)
4月29日
06:30 新穂高温泉
08:30 白出沢出合
15:20 穂高岳山荘

4月30日
07:00 穂高岳山荘発
08:30 奥穂高岳
09:00 直登ルンゼ滑降開始
09:20 小豆沢に合流、白出コルに登高開始
10:15 白出コル(穂高岳山荘)着
11:05 白出沢滑降開始
      (この間、登り返し、救助)  
12:30 穂高岳山荘着
      (この間、関係者連絡、救助関係活動)
13:15 T,Aで下山開始(白出沢経由)
15:20 白出沢出合着
16:50 新穂高登山口着

(装備) 寺田 ディナスターAERO、バンディット、TLT TriStep、
     Y  ガルモントメガライト、シュガーダディ、ディアミール
     A  スカルパトルネード、K2、ディアミール